あなたの肌に良いことをわかりやすく伝える副院長のコラム

皮膚と食事について

今回は肌や皮膚の病気にまつわる身近な食生活についてお話します。

 

  日本人一人当たり平均で週に10杯を消費しているとされるコーヒーですが(全日本コーヒー協会調べ)、ここ数年の研究で色々なことが分かってきています。

 

 アルコール、牛乳、小麦、コーヒーなどの摂取量と皮膚がんを含む悪性腫瘍の発生率についてこれまでに独立して行われた複数の臨床研究のデータを収集・統合した研究で(Nat Commun. 2021, 28;12: 4579)、コーヒーを多く摂取する人たちにおいて、肝臓がんの発生のリスクが軽減されるという研究が発表されました。この研究では、紫外線暴露のダメージの影響を大きく受けるため白人にとても多いとされる基底細胞がんという皮膚悪性腫瘍でも同様の効果があるとされ、コーヒーに含まれるポリフェノールの抗酸化作用やカフェインの何らかの生物学的効果があるとされています。

 

 また、「赤ら顔」としてするが多い酒さという疾患においても、82,000 人以上の女性を対象に6年にわたって継続的に酒さの患者と生活習慣に関して行われたイギリスの研究で、カフェイン摂取量が多いほど酒さになりづらいことがわかりました。(JAMA Dermatol. 2018 ; 154: 1394–1400)。

 

 ここでご紹介した二つの研究は、さまざまな人種や地域の人を対象としているため、これらの結果をそのまま日本人にあてはめることは無理があるかもしれませんが、2020年には日本人の健常人女性だけを対象にして、シミ、肝斑、くすみ、隠れジミ、毛穴、シワ、キメ、などのあらゆる肌状態を数値化する皮膚画像解析システムを用いた精度の高い研究で、コーヒーを多く消費する人たちのほうがシミなどのいわゆる光老化の程度が軽減されることが示されました。この研究ではコーヒーと同様に抗酸化作用を有するポリフェノールを多く含む緑茶においても同様の効果があることが示され注目されています(Clin Cosmet Investig Dermatol. 2020; 13: 165–172)。

 

 にきびと食事に関してもいろいろなことが分かってきています。2017年の尋常性ざ瘡の診療ガイドラインでは、「ざ瘡患者に,現時点では特定の食事指導を推奨はしない」と記されていますが、

 

 最近の研究では、食後血糖値の上昇を示す指標であるグリセミックインデックス(GI値)の高い食事が、ニキビ発症の引き金となること示唆しているほか、30歳以下の年齢が若い方だと、乳製品もニキビの悪化のリスク因子になることが分かりました(Nutrients. 2018 9; 10: 1049)。一方で、くるみ、エゴマ油、アマニ油、サバなどのオメガ3脂肪酸が豊富な食品は、炎症性サイトカインの産生を抑制し、ニキビの発生を抑えるとされています。

 

 ニキビで悩まれている患者さんからは、何が原因なのか聞かれることも多く、今後も多くの研究がなされ、いろいろなことが明らかになることが期待されます。

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