あなたの肌に良いことをわかりやすく伝える副院長のコラム

日焼けについて【3】

日本人のビタミンDの摂取状況について述べたいと思います。

 

 厚生労働省が取りまとめた国民健康・栄養調査をみてみると男女を問わず20歳台から40歳台の方々で一日当たりの目安量を大きく下回る一方、50歳台以上では十分に摂取できていることがわかります。この差はビタミンDを多く含む魚介類なかでも生の魚介類の摂取量の差に起因すると報告されています。また最近の健康志向を反映したせいか、どの世代においても野菜の摂取量は十分でビタミンA,E,Kなど他の脂溶性ビタミンは不足なくとれているとのことでした。日本におけるビタミンDの摂取目安量5.5㎍/日は焼き魚を一週間に2-3回程度いただけば取れる量ですので普段の食生活を少し工夫するだけで十分に摂取できるものと思います。

 

 また、ビタミンDをサプリメントで取る必要はあるのかについても考えてみたいと思います。日本におけるビタミンDの摂取目安量が5.5㎍/日に対して、アメリカのビタミンDの摂取目安量は10㎍/日となっていますが、この10㎍/日という基準には日照によるビタミンDの体内の生合成分を含んでいません。なお5.5 μgのビタミンDを生成するのに必要な日光照射時間は顔と両方の手の甲を露出していた場合、7月の晴天時では、数分で足りるとの試算もあります(Miyauchi, M. Journal of Nutritional Science and Vitaminology, 59, 257-263, 2013.)。

 

 アメリカで流通する牛乳のほぼすべてにはビタミンDが添加され、シリアル、フルーツジュース、豆乳などにも添加されているものがあります。またビタミンDのサプリメントを摂ることも推奨され、サプリメントを購入するのにあたる様々なアドバイスをもらえる英語サイトもあるほどです。世代間、男女間だけでなく人種間でもビタミンDの摂取状況に大きな違いがあることと、紫外線暴露による皮膚がんの増加を踏まえて日照を極端にさけるようなライフスタイルがあることからこのような施策が取られているものと思われます。イギリスでも2016年のガイドラインで冬期の日照不足を懸念して一日10㎍のサプリメント摂取が推奨されています。

 

 しかし、ビタミンDは脂溶性ビタミンであることから過剰に摂取した場合には体内に蓄積され高カルシウム血症を引き起こし、嘔吐、食欲不振、体重減少、脱力感、見当識障害や腎障害を起こすことが知られています。皮膚科領域では、尋常性乾癬の治療としてビタミンD製剤を外用していた患者さんの皮膚を舐めた飼い犬の腎障害の報告もあるほどです。

 

 日本人である私たちは、サプリメントに頼りすぎりことなく、まずは豊富な魚介類の摂取を基本とした食生活の工夫によって適切な摂取を心がけたいと思います。

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