あなたの肌に良いことをわかりやすく伝える副院長のコラム

運動することが皮膚をきれいにする

 最近、メディアやSNSでも美肌効果のあることがうたわれるマイオカインについて述べます。

マイオカインとは、骨格筋(筋肉)から分泌される生理活性物質(サイトカイン)の総称です。運動が健康に良いことは、すでに当然のこととして広く知られているところです。また、軽い運動を継続する習慣があったり、よく体を動かした後には肌のハリがよくなることは経験則的にご存じの方もおられるのではないでしょうか?

こういったことを裏付けるように筋肉から分泌される「マイオカイン」という物質が、全身のさまざまな臓器に影響を与え、病気や老化の抑制にも関連すると知られるようになりました。  

マイオカインが注目されるようになったのは、2003年にマイオカインの一種、IL-6をデンマークの研究家が発見し、「マイオカイン」が定義づけられたことに始まります。それ以降、発見されているマイオカインは数十種に及びます、マイオカインは骨格筋が運動や活動によって収縮するときに分泌され、筋肉自体を強化するだけでなく、血流にのって全身にいきわたり、さまざまな機能を調節していることが分かってきました。

                                 日経gooddayサイトより

 

図でお示ししたように、マイオカインは筋肉、骨、脂肪細胞の再生や強化、代謝に影響を与えます。なかでもIL-6、イリシンは、糖や脂質の代謝に影響し、筋肉中で糖や脂質の代謝を高め運動機能を上げるだけでなく、血管では動脈硬化を抑制し、膵臓でインスリン分泌を高めて糖尿病になりづらくなったり、脂肪組織を燃えやすい褐色脂肪細胞に変えて太りづらくなったりすることが知られています。

また、マイオカインの一種であるSPARCはがんとの関連が知られています。SPARCは加齢とともに低下する一方、習慣的な運動によって増えることが知られています。運動することで筋肉から分泌されたSPARCが血流にのって腸に到達し、大腸がんの芽になる細胞アポトーシス(細胞死)に導くことが動物実験や細胞の培養試験によって確認されています。

皮膚においては、マイオカインの一種であるマイオネクチンが修復機能や抗老化作用を示すことも知られています。ポーラ化成工業の研究によると、培養した表皮細胞に紫外線照射などのストレスを加えて、マイオネクチンと合わせて培養すると炎症因子の産生が抑えられ、ストレスを加えていない表皮細胞と同じ状態を保ち、シミのもとになるメラニン顆粒を増やすのを抑えたということです。

               

そして、さまざまな疫学調査でも年代にかかわらず、これまでなかったストレッチや軽い体操などの運動習慣を取り入れることで、シミやしわが減少することも知られています。

                

                          ポーラ化成工業より

マイオカインに関する研究成果はこれから広く知られることになるかと思いますが、これまでに知られていることを要約すると、いつからはじめても遅くない、また、身体的にも時間的にも負担のならない軽い運動を習慣化することが、皮膚だけでなく体全体に良いことは間違いありません。ぜひ今日からでも始めたいものです。