ピコレーザーをつかったトーニングについて
今回は当院のピコレーザーをつかったトーニングについてお話しします。
ピコレーザーは、これまでの一般的なレーザーの照射時間「ナノ秒(10億分の1秒)」の1000分の1である「ピコ秒(1兆分の1秒)」単位でレーザー光を照射する最新のレーザーです。照射時間が極めて短いため、ターゲットにピンポイントに作用し、周囲へのダメージが最小限に抑えられる非熱性、非破壊性の治療で、治療後の「ダウンタイム」などの心配がないのが特徴です。
1980年代の中ごろから欧米では長年の紫外線暴露の影響で光老化した皮膚の治療として、各種のケミカルピーリングが行われ、1990年代に入ると炭酸ガスレーザーで表面を「削る」あるいは「ならす」ことで皮膚を全層性に再生させるような侵襲の高い治療もされるようになりました。その後2000年代になると532nmから1064nmまでのさまざまな波長を用いた非侵襲的なレーザー治療やIPL治療が、2010年代に入るとピコレーザーによるトーニング治療が学術的な裏付けをもって広くなされるようになりました。
そもそもトーニング(toning)とは、「調色」=色調を整える、という意味で用いられる言葉です。実際の手技としては、ピコレーザーを低出力に設定し、縦横まんべんなくお顔の皮膚全体に照射します。トーニングに用いるピコレーザーは前に述べたように、「非熱性・非破壊性」ですので、しみの原因となるメラニン顆粒を作るメラノサイトをダイレクトに破壊することはありませんが、メラノサイトで作られたメラニン顆粒が角層に運ばれるのを抑制する効果があることが知られており、(Kim JE, et al. Clin Exp Dermatol.2013; 38: 167-171)、その結果、非侵襲性でありながら、シミの治療に効果的です。
またピコレーザーの波長は深達性にも優れていますので、真皮に近い深い部分のシミにも効果があります。ある研究(Nakano S. Laser Therapy.2020; 29: 53-60)では、1064nmの波長のピコレーザーを照射する前と照射した後で照射部位の皮膚を採取したところ、真皮の上層から中層でのコラーゲンの増加、またコラーゲンの線維自体もそれぞれが延長すること、またコラーゲンが増生した部位での皮膚を栄養するための微小な血流が再開したことなどが確認されました。つまり、真皮のコラーゲンに刺激を与え、再生と再構築を促すことで、徐々に肌の本来の元気を取り戻し、肌のひきしめ、たるみの改善、ふっくらとした肌質感を取り戻し、肌全体が白く明るくなることが期待されるという治療です。
当院では、以前のコラムでも触れたレーザーフェイシャルを5回施行されて、「うぶ毛がなくなり、うすいシミがなくなって、『化粧のノリがよくなった』、『くすみがなくなった』と様々な恩恵を実感していただいたあとに、更にシミを集中的に治療されたいという方にご案内しています。レーザーフェイシャルを5回施行された後には20~30%程度シミが少なくなりますが、ピコトーニングはさらに20~30%シミを含めた色素斑を減らす効果があることが、(こちらも以前コラムで触れました)Re-beauによる観察で明らかになっています。